【追加検証】GPS測位ユニット・ネットワークRTKの性能を発揮する利用条件とは?

こんにちは、株式会社ギョロマンのカスタマーサポート担当です。

今回のテーマは「GPS測位ユニット・ネットワークRTKの性能を十分に発揮するための利用条件は?」というお話です。

前回の検証結果を踏まえて、さらに追加検証を行いました

これまで当ブログでは、実際にギョロマンの高精度GPS測位ユニットGG-1/GG-1LTを使って、様々な検証を行ってきました。前回の検証ではバス走行中のトラッキングを行い、下記のような結果をお伝えしました。

  • バス走行中(時速30〜40km程度)においても、ある程度のGPS精度を保てる
  • それよりもGPS測位を行う場所(周辺環境)の方が重要
  • GG-1LTの設置環境も重要

今回は以上の結果を踏まえて、さらに追加検証を行いました。

  • 前回は「単独測位」だったが、より精度に優れた「ネットワークRTK」の場合はどうか?
  • ネットワークRTKであれば周辺環境が悪くても精度を保てるのか?
  • ネットワークRTKを利用する上で、周辺環境の他に性能を発揮できる条件は何か?不得手な条件は?

本記事ではこれらの検証結果をお伝えします。

以下、本文中に出てくる「GPSユニット」はGG-1LTを指します。

各測位状態とGPS精度の関係

本題に入る前に、各測位状態とGPS精度の関係性について解説します。

GG-1/GG-1LTでは「単独測位」「SBAS Fix」「RTK Float」「RTK Fix」という4種類の測位状態があり、「単独測位」→「SBAS Fix」→「RTK Float」→「RTK Fix」の順に精度が上がっていきます。また、これらの各状態はGPS衛星の受信状況に応じて、自動的に行ったり来たりします。

測位状態精度の目安
単独測位数メートル程度
SBAS Fix1〜2メートル程度
RTK FloatSBAS FixとRTK Fixの間
RTK Fix数センチメートル程度

この内、ネットワークRTKで利用できるのが「RTK Float」と「RTK Fix」です。単独測位より精度が高く、「RTK Fix」の状態であれば数cmレベルの精度が得られますが、GPS衛星の受信状況が悪ければ「RTK Float」→「SBAS Fix」というように精度が低下する方向へ状態遷移してしまいます。よって如何に良好な受信状況を維持できるか、これがGPSユニットの性能を引き出すための肝となります。

左下のGPSアイコンが測位状態によって変化します

ネットワークRTK利用時に知っておきたい2つのコツ

ネットワークRTKを利用する際には、留意してほしいコツが2つあります。そもそも「RTK Fix」をキープする以前に、まずは「RTK Fix」の状態にしなくてはなりませんので、しっかりと頭に入れておきましょう。

コツ①まずは良好な状況で一旦RTK Fixの状態にする

ネットワークRTKを開始直後は、良好な状況で一旦RTK Fixの状態になるまで待ちましょう。

左下のGPSアイコンがRTK Fixになるまで待ちましょう

例えばRTK Fixする前に移動してしまったり、受信状況が安定しないまま測位を開始してしまうとRTK Fixの状態に遷移しづらくなってしまいます。逆に一度Fixしてしまえば比較的その状態が維持されやすく、一時的に「RTK Float」や「SBAS Fix」へ悪化してしまった場合も「RTK Fix」に戻ってくれます。

なお、「RTK Fix」の状態に遷移するには、ネットワークRTKを開始してから数分〜10分程度要する場合もあるので焦らないようにご注意ください。

コツ②GPSユニットのアンテナを垂直に立てる

GPSユニットはアンテナをなるべく垂直に立てた状態で設置しましょう。アンテナを寝かせた状態で設置してしまうと性能を発揮できない場合があります。

なるべくアンテナが垂直になるように設置しましょう
アンテナの向きが悪いと性能を発揮できません

今回の追加検証も以上2点に留意して実施しています。それでは追加検証の結果をみていきます。

こんな場合はどうなる?各シチュエーションでネットワークRTKを試してみました

GPSユニットの性能を引き出すためには、「如何にネットワークRTKの状態をキープできるか」が重要であるとお伝えしました。では衛星からの電波受信状況が低下しそうな以下のシチュエーションではネットワークRTKを維持できるのでしょうか。実際に追加検証してみましたので結果をご紹介します。

車のダッシュボード(運転席前)に設置してもFIXする?

GPSユニットは当然何も遮るものがない場所に設置するのがベストです。前回お伝えした検証結果のように、GPSユニットの設置環境が悪ければ、GPS精度は大幅に低下してしまうことがわかっています。とはいえ、多少の遮蔽物が許容されるのであれば、GPSユニットの設置場所、利用用途の幅が広がるのも確かです。そこで車のダッシュボード(運転席前)に設置してトラッキングを行ってみました。

ダッシュボードならOK

結果、車のフロントガラス1枚を隔てたダッシュボードの上であれば、「RTK Fix」を維持できることがわかりました。下のトラッキングデータを見れば、走行中も「RTK Fix」を維持していることがわかります。

RTK Fixがキープできている

今回検証に使用した車のダッシュボードはフロントガラス1枚に遮られているものの、設置したGPSユニットの真上には屋根がなく、良好な受信環境であったと言えそうです。

車両中央の場合は?

検証結果を比較するため、車両中央に設置した状態でもトラッキングしてみました。

結果、やはりダッシュボードに比べると精度は低下してしまいました。

前述したコツ①のように一旦「RTK Fix」にした状態から上記写真の位置に設置しましたが、設置直後すぐに「RTK Float」に低下。走行中も「RTK Fix」になったのは一瞬だけで、ほとんどの区間で「RTK Float」か「SBAS Fix」の状態でした。

緑のプロットが「SBAS Fix」
オレンジのプロットが「RTK Float」
深緑のプロットが「RTK Fix」を表し、
ほとんどの区間で「RTK Float」または「SBAS Fix」であることがわかります

下の画像はダッシュボード設置時のトラッキングデータですが、車両中央時と比べると「RTK Fix(深緑)」の状態が多いことがわかります。

ダッシュボード設置時は「RTK Fix(深緑)」の状態が多い

以上の結果から、やはりGPSユニットの設置位置はとても重要であることがわかります。

周辺環境が悪くてもFIXする?

次に、前回の検証では大きく精度が乱れてしまった「高架下の走行」ではどうでしょうか。

トラッキングデータを見ると、前回ほど大きな乱れはないものの、高架下を並走している間は「RTK Fix」を維持できておらず、「RTK Float」や「SBAS Fix」まで状態が低下してしまっていることがわかります。

「SBAS Fix(緑)」「RTK Float(オレンジ)」「RTK Fix(深緑)」が混在していることがわかります

下記のトラッキングデータでも、それまで「RTK Fix」を維持できていた状態から、高架下に入ったことで「SBAS Fix」に低下した様子がわかります。

また、下のトラッキングデータのように、トンネル(線路下)を通過した際も瞬間的に「RTK Fix」から「SBAS Fix」に状態遷移している様子がわかります。(その後、トンネルを抜けるとすぐに「RTK Float」→「RTK Fix」に戻る様子も見てとれます)。

それまで「RTK Fix(深緑)」だった状態から、高架下で「SBAS Fix(緑)」に低下し、高架を抜けると「RTK Float(オレンジ)」→「RTK Fix」へと復帰していることがわかります
走行中、一時的に衛星からの電波が遮られてしまったと考えられます

これらの結果から、やはり高架下や周囲に高いビルが立ち並んだ場所など、衛星からの電波が遮られてしまうような周辺環境ではネットワークRTKの性能を引き出すことは難しいことがわかります。

高速移動時でもFIXする?

最後に、前回の検証でも注目した「走行中(高速移動時)」に「RTK Fix」を維持できるか検証してみました。

結果、周辺環境が良い状況であれば、時速50〜60kmの走行中も「RTK Fix」を維持できることがわかりました。

ただし、衛星からの電波を受信しづらい高架下走行時のトラッキングデータを見ると、プロットの間隔が小さい箇所から大きくなる、つまり走行速度が加速した部分では「RTK Fix」→「SBAS Fix」へと状態が低下し、逆にプロット間隔が狭まる箇所(減速した箇所)では「RTK Float」→「RTK Fix」へ改善しました。これらの結果を踏まえると、GPSユニットの移動速度が衛星からの電波受信に少なからず影響していると言えそうです。

ネットワークRTKの性能を引き出す利用条件まとめ

  • ネットワークRTKを利用する際は「まず一旦RTK Fixにする」「GPSユニットのアンテナを垂直に立てた状態で設置する」の2点に留意すること。
  • フロントガラス1枚隔てた程度の設置環境であれば、「RTK Fix」を維持できる。
  • 高架下などの衛星電波を遮ってしまうような環境下においては、「RTK Fix」を維持するのは難しい。ただし、受信環境が好転すれば、「RTK Fix」に復帰することも期待できる。
  • 良好な環境においては、時速50~60km程度の移動速度でも「RTK Fix」を維持できる。ただし、GPSユニットの移動速度は少なからず衛星からの電波受信に影響するため、移動速度は遅い方が望ましいと考えられる。

GPS-RTK測位ユニット「GG-1」、およびモバイルGISアプリ「ギョロモバイル」はテスト機の無料貸出も行っております。高精度測位を試してみたい方はお気軽に担当福元(ふくもと)までご相談ください。また、「GG-1/GG-1LTを使ってこういうことを試したい」「ギョロマンに試してみてほしい」ということがございましたら、お問い合わせフォームよりご相談ください。

GPS-RTK測位ユニット「GG-1」