【検証結果】GPS受信ユニットの測位精度向上には受信環境が超重要

こんにちは、株式会社ギョロマンのカスタマーサポート担当です。

今回のテーマは「GPS受信ユニットの測位精度を上げるためには受信環境が超重要」というお話です。

以前、「GPS受信ユニットの移動速度とGPS精度への影響」を検証するため、自転車にGPS-RTK測位ユニット「GG-1LT」を取り付け、走行中のトラッキングを行ったことがありました。

今回はもう少し速い速度、つまり車の走行中だった場合はどうか?を調べるため、路線バス(以下、都バス)に乗車した状況でトラッキングを行ってみましたので、その検証結果をご紹介します。

以下、本文中に出てくる「GPSユニット」はGG-1LTを指します。

バス走行時のトラッキングでわかった2つのこと

今回の検証では大きく2つのことがわかりました。

1つ目は「都バスの走行速度程度であれば、GPS精度は大きく影響を受けない可能性がある」。
そして2つ目は「GPSユニットの移動速度(走行速度)よりも、GPSユニットの受信環境の方がよっぽど影響を受けやすい」ということです。

バス走行中のGPS精度は比較的安定

運行中の都バスは停留所での停車や信号待ちのために加速と減速を繰り返し、常に一定の速度で走行するわけではありません。スピードを出して走行する状況はあまり多くなく、一番速度が出たときでもせいぜい時速30〜40km程度でした。

それを踏まえて今回の検証で取得したトラッキングデータをご覧ください。

バス乗車から降車まで記録したトラッキングデータ

縮尺を拡大すると、走行速度が速い時は各トラッキングポイント同士の距離間隔が広くなり、走行速度が遅い時は間隔が短いことがわかります(トラッキング間隔は1秒です)。

走行速度によってトラッキングポイントの間隔が広くなったり狭くなったりする

走行速度が速い時と遅い時でトラッキングデータを比較してみると、走行速度が速くなったからといって、さほどGPS精度に乱れが生じていないことがわかります(むしろ停車中の方が若干乱れています)。

バスが右折した交差点の写真

上の写真はバスが右折する交差点を撮影したものですが、トラッキングデータを見ると、バスの停留所があった左車線から右折車線へ車線変更した様子がわかります。走行中であっても、この程度のGPS精度は得られるということです。

トラッキングデータから車線変更した様子がわかる

また、次の画像はバスの停留所に停車した部分のトラッキングデータですが、停留所の窪みに寄せた様子もわかります。

停留所に停車した様子がわかる

このように、ある程度の走行速度であれば、GPS測位にさほど影響が出ないことがわかりました。しかし、今回の検証では「走行速度よりも影響が大きい重要な要素」が判明しました。それは「GPSユニットの移動速度よりも、GPSユニットの受信環境の良し悪しの方がよほどGPS精度に影響を与える」ということです。

GPSユニットの受信環境が悪いとGPS精度が大きく悪化する

今回の検証においては、常に安定したトラッキングデータが取得できた訳ではありませんでした。トラッキングデータの拡大図を見てみると、走行した軌跡からトラッキングデータが大きく逸れてしまっている箇所が確認できます。

所々トラッキングデータが乱れてしまっている箇所もあった

ではなぜこうなってしまったのか?
考えられることは、GPSユニットの受信環境の悪化です。

軌跡が乱れてしまっている上記トラッキングデータというのは、バスが高架下を並走している時に該当します。下記写真のようなシチュエーションです。

電車の高架と並走する道路。比較的高さのあるビルも多い

下記のトラッキングデータは特に精度が乱れていますが、これはバスが右折車線で信号待ちをしていた時でした。

トラッキングデータが特に乱れていた箇所
トラッキングデータが特に乱れていた現場の写真

高架下は真上がコンクリートで遮られており、道路脇に立ち並んだ高さのあるビルも遮蔽物になり得ます。このように、衛星からの電波が遮られやすい環境であったことがGPS精度低下の一因であると考えられます。

受信環境はGPSユニットの「周辺環境」と「設置環境」に着目

「GPSの精度には受信環境が大きく影響する」という点で言えば、周辺の環境だけではなく、GPSユニットの設置環境そのものも重要です。

今回の検証は路線バスの往復で2回計測を行いましたが、バス内におけるGPSユニットの位置でも精度への影響が顕著に現れました。「行き」は終始手すりにつかまって立っていたためGPSユニットは窓から1m程度離れた位置にありました。一方、「帰り」は窓際の席に座れたので、ほぼ窓の位置にGPSユニットがありました。

結果、「帰り」は常時、精度の良い「SBAS FIX」の状態でしたが、「行き」は受信位置が良くなかったからか、ほとんどSBAS FIXになることはなく、終始「単独測位」の状態でした。そのため、やはり「帰り」と比べると「行き」の方がトラッキングのバラツキは大きく、GPSユニットの設置環境が大きく影響したと考えられます。

受信位置が悪かった「行き」は単独測位
受信位置が良かった「帰り」はSBAS Fix
「行き」と比べると精度が良いが、それでも高架下は精度が低下した

検証結果まとめ

  • GPSユニットの性能を十分に発揮させるためには良好な受信環境が絶対条件である。どれだけ高精度なGPSユニットだとしても、受信環境が悪ければ計測結果にバラつきが出てしまう。
  • (受信環境が良好であれば)バス走行時程度の速度下においても、さほどGPS精度に影響は現れないと考えられる。

実際に検証してみた体感で言えば、移動速度の速さよりも、受信環境の良し悪しの方がGPS精度への影響は大きいように感じられました。

精度の高い位置測位を行うためには、GPSユニットの性能が優れていることもさることながら、GPSユニットの受信環境も整っていなければなりません。受信環境を整えてあげなければ、GPSユニットの性能を十分に引き出すことはできないということです。GPS位置測位の精度を改善したい場合には、GPSユニットの周辺環境や設置環境を見直してみると良いかもしれません。

2022/02/28追記:
本記事の結果を踏まえて追加検証を行いました。そちらの検証結果もあわせてご参考ください。
【追加検証】GPS測位ユニット・ネットワークRTKの性能を発揮する利用条件とは?

2022/11/25追記:
実際に林内でRTK測量を行った実験データはこちら
関連記事:【検証結果】林内でのRTK測量実験データ

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