RTK測位の仕組みとGNSSユニットGG-2による測量方法

こんにちは、株式会社ギョロマンのカスタマーサポート担当です。

昨年12月に新発売したギョロマンのGNSSユニットGG-2はRTK測位に対応しています。今回はまずRTK測位の仕組みに触れ、その後GNSSユニットGG-2を使ったRTK測量のやり方について解説します。

GNSSとGPSの違い

RTK測位について解説する前に、GNSSとGPSの違いについて触れておきます。

GG-2の前モデルGG-1では「GNSSユニット」ではなく「GPSユニット」と表記していました。 GNSSは「Global Navigation Satellite System」の略で、衛星を利用した測位システムの総称を指します。一方、GPSGlobal Positioning Systemの略で、アメリカ合衆国によって運用される衛星測位システムを指します。つまり、一般的に馴染みのあるGPSはGNSSに含まれる衛星の一つということになります。 

GNSSにはGPSの他に、日本のQZSS(みちびき)、中国のBeiDou(ベイドゥ)、EUのGalileo(ガリレオ)、ロシアのGLONASS(グロナス)などが含まれ、GG-2はそれらからの電波も受信して測位していることから、「GNSSユニット」と表記を変更しています。

RTK測位の仕組みと単独測位との違い

GNSSによる位置測位には、単独測位と、より精度の高いRTK測位の2種類の測位方法があり、GG-2は両方の測位方法に対応しています。

RTK測位と単独測位の違いは「受信機の台数」と「位置補正情報の有無」です。

測位方法受信機の台数位置補正情報
単独測位1台(移動局のみ)なし
RTK測位2台(移動局と基準局)あり
表1 RTK測位と単独測位の違い

単独測位

単独測位は文字通り、衛星電波の受信機が1台のみであるため、準備がカンタンで手軽に位置測位できる一方、誤差が生じやすいデメリットもあります。スマートフォンのGPSを使った一般的な地図アプリなどは単独測位が用いられています。

RTK測位

RTK測位は2台の受信機それぞれが衛星からの電波を受信して測位を行います。
2台の受信機のうち、1台は「基準局」として固定の場所(定点)に設置します。もう1台は「移動局」として人や車両等に装着し、自由に場所を変えて測位可能です。

RTK測位では、基準局の位置情報を移動局に無線送信し、移動局が誤差を補正することで精度を高めます。単純に受信機が1台より2台の方が誤差が生じづらいので測位精度が高まる、そう考えれば良いと思います。

つまり、単独測位の場合は移動局のみで軌跡をトラッキングし、移動局に加えて補正用の基準局を追加したのがRTK測位ということになります。

GG-2はネットワークRTK測位にも対応

単独測位とRTK測位の他に、ネットワークRTKという測位方法もあります。

基準局(受信機)の代わりに「電子基準局」からの測位情報を「インターネット経由」で取得することで、移動局の測位誤差を補正する方法です。本来基準局と移動局の2台が必要なRTK測位とは異なり、移動局1台のみでRTK測位を行えるのが大きなメリットですが、インターネット接続できる環境が必須条件となります。

GNSSユニットGG-2を使ったRTK測量の手順

以上のように、RTK測量を行うには2台の受信機(基準局と移動局)が必要であり、GG-2でRTK測量を行う際にも2台のGG-2が必要となります。

RTK測量の大まかな手順は下記の通りです。

  1. 1台目のGG-2に基準局の設定を行う
  2. 2台目のGG-2に移動局の設定を行う
  3. 基準局の設置・起動
  4. 移動局の起動
  5. GPSアプリ(ギョロモバイル)で位置情報を表示

大きく5つのステップがありますが、すぐにご利用いただけるよう出荷時に初期設定を施していたり、「自動モード」をご用意しておりますので、難しい操作はありません。

なお、ここでは大まかな操作の流れを掴んでいただくため、設定パラメータ等の詳しい説明は省いております。各機能やパラメータの詳細はご購入時に付属される「操作ガイド」をご参照ください。

(1台目の)GG-2に基準局の設定を行う

まず、1台目のGG-2に基準局の設定を行います。

GG-2には4種類のモデルがあります(各モデルの違いは製品ページでご確認ください)。この内、基準局として扱えるのはGG-2 Base、またはGG-2 Base Proの2モデルです。

以下、GG-2 Baseと表記しますが、GG-2 Base Proでも手順は同じです。

GG-2 Base本体とギョロモバイル/GG-2セットアップアプリのインストールされたスマートフォンをBluetoothペアリングします。このときGG-2 Base本体のシリアルも覚えておきます。

GG-2とスマホ本体をBluetoothペアリングする

ペアリング完了後、GG-2セットアップアプリを起動します。

デバイス選択ボタンをタップするとペアリング済みのBluetoothデバイス一覧が表示されますので、GG-2 Baseを選びます。GG-2とスマートフォンが接続され、GG-2のデバイス情報が表示されます。

GG-2 Baseセットアップの流れ

今回は基準局を「自動モード」に設定します。自動モードを使えば、基準局が自動的に基準座標を取得するので簡単です。「基準局(自動)」が選択されていることを確認し、「設定を反映して再起動」ボタンを押します。これでGG-2 Baseの基準局設定が完了です。

基準局が選択されていればOK

GG-2基準局の自動モードと手動モード

RTK測位を行う場合、基準局には測量により得られた正確な座標と標高を設定する必要があります。

GG-2基準局の「手動モード」では、測量した座標と標高を設定することで、より高精度なRTK測位が可能です。

一方「自動モード」では、GG-2 Baseが単独測位で取得した座標を基準座標として使用します。測量した座標や標高がなくても手軽にRTK測位を行えますが、基準座標そのものに1.5m(CEP)程度の誤差が生じるため、センチ精度の測位はできません。精度よりも手軽さが求められる場面など、用途に応じてお選びください。

なお、GG-2 Baseは出荷時に「基準局(自動)」に初期設定されています。

最後に、「無線チャンネル」の値をメモしておきます。後ほど移動局の設定時に使用します。

無線チャンネルの「28」をメモしておく
STEP
1

(2台目の)GG-2に移動局の設定を行う

次に、2台目のGG-2に移動局の設定を行います。移動局で使用するのはGG-2 Roverです。

基準局と同様に、スマートフォンとGG-2 Rover本体をBluetoothペアリングします。その後、GG-2セットアップアプリを起動し、デバイス選択でGG-2 Roverを選びます。

GG-2 BaseとRoverそれぞれのシリアルも覚えておく

GG-2 Roverとスマートフォンが接続されるとGG-2のデバイス情報が表示されますので、先ほどメモした「無線チャンネル」を入力し、「移動局」が選択されていることを確認の上、「設定を反映して再起動」ボタンを押します。これでGG-2 Roverの移動局設定が完了です。

「移動局」と先ほどメモした「無線チャンネル」を確認

ここまでで、GG-2の事前準備は完了です。

GG-2 Roverも出荷時に「移動局」に初期設定されています。

STEP
2

基準局の設置・起動

ここからは実際の現場で行う作業となります。

三脚などを用いて基準局となるGG-2 Baseを設置します。設置後、GG-2 Baseを起動させると自動的に基準座標を取得します。これだけで基準局の設定は完了です。

基準局設置のポイント

  • GG-2 Baseの設置高さは地表から1.5〜2メートルが推奨です。
  • 920MHzアンテナは基準局、移動局ともに45度にすると最も通信距離が伸びます。
  • 基準局の920MHzアンテナを、移動局が作業する方向に向けておくと通信しやすくなります。
地表から2m程度の高さにGG-2 Baseを設置して起動するだけ
920MHzアンテナは45度傾けると通信性能が良くなる
起動して数分後、緑と赤のLEDが点滅すれば基準局として正常に動作しています

GG-2起動後に設置場所がずれたり、GG-2を動かしてしまうと基準座標の取得に失敗してしまいますのでご注意ください。

STEP
3

移動局の起動

基準局を起動したら、次に移動局(GG-2 Rover)を起動します。起動後、GG-2 RoverのLED緑が点滅していれば、基準局からの補正情報を正常に受信できています。

緑のLEDが点滅すればOK
STEP
4

GPSアプリ(ギョロモバイル)で位置情報を表示

これでRTK測量の準備が整いました。ギョロモバイルを立ち上げ、使用するGPSにGG-2 Rover(移動局)を選びます。移動局の位置情報が表示されれば、RTK測量の手順は完了です。

ギョロモバイルを起動してGG-2 Roverと接続

以前の記事でギョロモバイルの使用方法をご紹介していますので、そちらも合わせてご覧ください(GG-1もGG-2も基本的な使い方は同じです)。

STEP
5

まとめ

  • GNSSは衛星を利用した測位システムの総称。GPSはGNSSに含まれる衛星の一つ。
  • 単独測位とRTK測位の違いは「位置補正情報の有無」。RTK測位は基準局から送られる位置補正情報を利用するから精度が高まる。
  • ギョロマンのGNSSユニットGG-2なら「出荷時設定」や「自動モード」によってカンタンにRTK測量が可能。

高精度GNSSユニット「GG-2」テスト機の貸出も行っております。高精度測位を試してみたい方はお気軽に担当福元(ふくもと)までご相談ください。また、「GG-2/GG-2LTを使ってこういうことを試したい」「ギョロマンに試してみてほしい」ということがございましたら、お問い合わせフォームよりご相談ください。

高精度GNSSユニット「GG-2」