森林調査におけるモバイルGIS/GPS活用事例

こんにちは、株式会社ギョロマンのカスタマーサポート担当です。

ギョロモバイル/ギョロビューは株式会社ギョロマンが開発しているスマートフォンを使ったモバイルGIS/GPSアプリです。

今回はギョロモバイルの導入先のひとつである森林総合研究所森林農地整備センター様(現在は「森林研究整備機構 森林整備センター」)の活用事例をご紹介したいと思います。

なお、本記事の内容は森林総合研究所森林農地整備センター様(以下、センター。敬称略)のレポート「水源林造成事業におけるGPSの活用事例の紹介」「GPSで契約地のデータを蓄積」を元に作成、再編しております。

森林現況把握の課題

センターでは業務における森林の現況把握について下記のような課題がありました。

センターの課題

  • 造林地所有者、造林者の世代交代などの理由により、造林地の現況が把握できていない。
  • その場合はセンターの職員が現況把握、森林調査を行うが、センターも世代交代によって調査や管理に必要な情報、知識、技術、ノウハウの引継ぎが難しい実情がある。
  • センター職員の人数も少なく、OJTだけでは技術取得、引継ぎ対応が困難であり、その対応が大きな課題となっていた。

モバイルGIS/GPSアプリ「ギョロモバイル」の導入理由

前述の課題を解決するため、センターではGPSの導入が検討されました。

GPS導入検討のきっかけ

  • 他の林業関係機関等においてGPSの導入が進められているとの情報が入ってきた。
  • また、管内の事務所で使用されていた簡易GPSが視認性や操作性に優れているとの情報も入手。
  • 事務所からの情報を受け、(中略)ギョロモバイルの内容を確認したところ、他社製品と比較して明らかに優れていると判断できた。

ギョロモバイル選定の決め手

そしてセンターではギョロモバイルを導入することが決まりました。決め手となった主な採用理由は下記の通りです。

  1. 使用者の希望に即応したものづくり
    当初、GISデータ(幾何補正されたデータ)を作成するコスト面の問題からギョロモバイルの導入を一旦断念せざるを得なかったが、ギョロマンから簡易幾何補正機能追加の提案があり、その後機能が追加されたことから、導入できた経緯があった。
  1. 森林調査での実績
    既に他の林業関係機関が森林調査で活用しており、森林内で利用できる実績があった。
  1. 分収造林地施業図や空中写真も表示できる幾何補正機能
  2. ソフトとハードが独立している製品構成
    GPS専用端末に内蔵されたアプリケーションとは異なり、ギョロモバイルはスマートフォン(レポート当時はPDA)にインストールするアプリであるため、ハードウェア故障時のリカバリーがしやすい。また、モバイル端末の技術進化にあわせて端末を選び直すこともでき、GPS端末は精度の高い高価なものを選び、スマートフォンは安価なものを選ぶといった組み合わせ方も可能。
希望に合わせた自由な構成が可能

森林調査におけるギョロモバイルの活用方法

では実際の森林調査におけるギョロモバイルの活用方法をご紹介します。

GPSやナビゲーション機能による現在位置の特定

ギョロモバイルはGPSによって現在位置を特定することができます。「今、自分がどこにいるか」を把握できることは、現地調査を行う人にとって非常に大きな安心感をもたらします。ギョロモバイル導入以前は自分の現在地がなかなか把握できず苦労することもありましたが、現在位置の特定が容易になったことで、林況把握に多くの時間を割けるようになりました。

GPSで現在位置を特定
ナビゲーション機能

また、ギョロモバイルの「ナビゲーション機能」に目的地を設定し、画面に現在地と目的地を表示すれば、初めて踏査する現地であっても比較的容易に、且つ確実に目的地へ辿り着くことができます。

センターではこの機能を活用し、契約地の境界などの特定に活用されています。

トラッキング機能を用いた森林現況把握と路線選定

ギョロモバイルには移動した経路(軌跡)を記録できる「トラッキング機能」があります。この機能を使用すれば現地の踏査ルートが記録できるため、樹種界や林相の区分などの森林現況把握に活用されています。

また、作業道の路線選定にも活用されています。事前に等高線図に計画路線を記入し、その図面を幾何補正します。現地でギョロモバイルを使って計画路線を確認しながら踏査を行い、作業道の路線決定が行われています。

トラッキング機能

チェックポイント機能を用いた距離・面積の把握

ギョロモバイルには「チェックポイント機能」があり、2点以上のポイントを設定すれば「距離」を、3点以上のポイントを設定すれば「面積」を表示できます。

算出値の精度は端末のGPS性能によりますが、大まかな距離や面積を把握できることから、歩道等の延長や各種施業の実施区域の確認には十分活用することが可能です。

チェックポイント機能

カメラ撮影機能とメモ機能による現地位置情報の記録

センターの大きな課題の一つとして、後任者への現地情報の引き継ぎがありました。それまではデジカメで現地写真を撮影していましたが、デジカメで撮影した写真は日付で整理されており、現地状況を説明するコメントも少なかったため、撮影した契約地が特定しづらいことがありました。このため、現地の状況を正確に、且つわかりやすく記録しておくことは引き継ぎを行う上でとても重要です。

位置情報と紐付けたメモを保存

ギョロモバイルの「カメラ撮影機能」は撮影写真とGPSによる位置情報を紐付けて保存しておくことができます。また、「メモ機能」でコメントを残しておくこともできます。位置情報に紐付けた現地情報を記録しておくことで、後任者でも正確にその場所の情報を把握することができるようになりました。

独自施業図の取り込み

ギョロモバイルには「地図読み込み機能」があります。Shape形式のベクトルデータ、画像データを読み込んで地図として利用できるため、独自に作成した施業図を活用することも可能です。

なお、地図データファイルは、スマートフォンの内蔵ストレージに配置するため、ネットワーク通信ができない野外・森林内でも問題なくご利用いただけます。

独自地図の取り込みが可能

職員レベルにあわせた能力チェック

新人職員はギョロモバイルを活用して現地調査を行いますが、徐々に業務レベルが上がってくれば、その能力チェックにも活用できます。

例えば、現地踏査時に歩道などの踏査ルート、樹種界や林相界等を地図にフリーハンドで記入しておき、後ほどギョロモバイルの「トラッキングデータ」や「チェックポイントデータ」と比較することで、どの程度地図が読めるようになったのかをチェックすることができます。

モバイルGIS/GPSで得られることまとめ

  • GPSの位置情報やナビゲーション機能、トラッキング機能などが調査員のスキルを補うので、経験の浅い職員でも森林調査を行えるようになる。
  • 測量士の力を借りなくても、ある程度の距離、面積を把握することができるようになる(予備測量)。
  • メモや撮影写真を位置情報に紐付けで記録することができるため、後任者への引き継ぎが容易になる。

ギョロモバイルの導入実績は100社以上

ギョロモバイルはこのような森林調査をはじめ、多くの現場で調査員の現地調査をサポートしております(導入先は国内外合わせて延100社、出荷台数計1,500セット以上:2020年10月現在)。

実際に林内でRTK測量を行った実験データはこちら
関連記事:【検証結果】林内でのRTK測量実験データ

高精度GNSSユニット「GG-2」テスト機の貸出も行っております。高精度測位を試してみたい方はお気軽に担当福元(ふくもと)までご相談ください。また、「GG-2/GG-2LTを使ってこういうことを試したい」「ギョロマンに試してみてほしい」ということがございましたら、お問い合わせフォームよりご相談ください。

モバイルGIS/GPS「ギョロモバイル」